
原価適正化
公開日:
「ずっと課題だった。でも手が足りなかった」── 混在する見積基準を、一から再構築するまで
具体的な課題と導入効果
導入前
部門ごとにバラバラだった見積方法
根拠を説明できない工数算出が、現場とのズレと損益構造の課題を生んでいた
かつて策定された社内規格は、組織改編の過程で更新が途絶え、事業部ごとに作られた独自の見積標準と混在する状態に。どの項目にどの基準を使うかが整理されないまま長年運用され続けた結果、根拠を問われても説明できない状況に陥っていた。現場からは「この工数ではできない」という声が上がり、生産センターの損益も改善の糸口が見えない状態が続いていた。
導入後
工数の根拠が理論的に説明できる状態へ
シミュレーションと実績の一致を確認し、精度向上への確かな手ごたえ
五面加工機を対象に、加工種ごとの理論式構築を推進中。正面フライスではシミュレーションと実績がほぼ一致し、全加工種±15%以内の精度達成に向けた確かな道筋が見えてきた。コスト担当や現場作業者に対して妥当性を説明できるようになり、メンテナンス可能な仕組みへと変わり始めている。
※本記事では、芝浦機械様における匠技研工業のコンサルティング(工数算出ロジック構築)の取り組みをご紹介しています。本プロジェクトは理論式の構築フェーズから開始し、将来的な匠フォースの導入・運用定着を見据えた一気通貫の取り組みです。
芝浦機械株式会社は、工作機械・射出成形機・ダイカストマシン・押出成形機など多岐にわたる産業用機械を手がける東証プライム上場の産業機械メーカーです。
同社の生産技術課では、工程設計から工数算出、品質管理、コスト改善まで、モノづくりの根幹を担っています。しかし、その中でも原価の起点となる「工数算出」は、長年にわたりロジックがブラックボックス化し、積年の課題となっていました。
組織改編を経て見積基準が混在したまま長年手つかずになっていた同社が、なぜ匠技研工業をパートナーに選び、工数算出ロジックの再構築に踏み出したのか。生産技術課の3名に、取り組みの背景から現在の手ごたえ、今後の展望までを伺いました。
■会社概要
社名: 芝浦機械株式会社
事業内容: 射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機、工作機械、超精密加工機、微細転写装置、高精度光学ガラス素子成形装置、産業用ロボット、電子制御装置、鋳物などの製造・販売およびレトロフィット・アフターサービス等
設立: 1949年3月
従業員数: 連結3,175名、単独1,535名(2026年9月1日現在)
URL: https://www.shibaura-machine.co.jp/
■インタビューにご協力いただいた方
芝浦機械株式会社様
生産センター工機生技部 生産技術課 課長 藤本 亮輔 様
岡田 英之 様
坂口 魁生 様
匠技研工業 カスタマーサクセス 井ノ上
※本記事の掲載内容はすべて取材時(2026年4月)の情報に基づいています。
工数算出・原価設定を起点に、QCD向上を推進する生産技術課

──井ノ上(匠技研工業) まずは、生産技術課の業務内容について教えてください。
藤本 様: 当社には工機課と鋳造課があり、生産技術課はその両方の生産技術全般を担当しています。工程設計、工数設定、治具の開発、品質向上活動、デリバリーの改善、コスト低減と、QCDの向上をミッションとして幅広く取り組んでいます。その中でも今日のテーマに関わるのが、工数の算出と原価の設定です。ここを坂口と岡田が担当しています。
──井ノ上(匠技研工業) 坂口さんの普段の業務を教えていただけますか。
坂口 様: 私は工作機械、射出成形機、ダイカストマシンの部品の工数見積をメインでやっています。それぞれの部門の主力部品の加工注文が来て、それに対して工数を見積もるという業務です。
──井ノ上(匠技研工業) 岡田さんはいかがですか。
岡田 様: 私も工数見積担当ですが、特定の部門ではなく、全部門を横断的に受け持っています。工作機械、超精密加工機、押出成形機、射出成形機、ダイカストマシン等全部です。加えてで社外からの外販の見積も担当しています。
積年の課題 ── 社内規格と独自標準が混在したまま、着手できずにいた工数算出
──井ノ上(匠技研工業) 匠技研工業との取り組みに至るまでの背景を教えていただけますか。
藤本 様: もともと社内には工数算出の規格があったのですが、組織改編で策定メンバーが各事業部に分散してしまいました。その間に各事業部がそれぞれ独自の見積標準を作って運用するようになり、元の規格と独自ルールが併存する形になりました。その後、部門が再統合された時には規格の更新も止まってしまい、なぜそうなっているのか、理由を問われても説明することが難しい状況でした。
──井ノ上(匠技研工業) 課題自体はずっとあったけれど、なかなか着手できなかったということでしょうか。
藤本 様:そうですね。算出方法の違いや根拠の不明瞭さは、ずっと課題として認識していました。ただ、組織改編が進む中で工数担当の人員が減っていき、日常の見積業務をこなすだけで精いっぱいで、基準の見直しにまで手が回らなかったんです。やらなきゃいけないとわかっていながら、着手できる状態になかった。
「なんだこれは」── 後任として見積に入った坂口氏の衝撃

──井ノ上(匠技研工業) 坂口さんが工数見積に携わるようになったきっかけを教えてください。
坂口 様: もともとベテランの見積担当の方がいらっしゃったのですが、その方が定年で退職されるタイミングで私が業務に入りました。そこで、当然見積を覚えなければいけませんから、とりあえずやってみるわけです。ただ、実際に算出された時間を見て、思わず「なんだこれは」と。こんなロジックで決まっているところもあるのかと、当時は正直、驚きましたね。
──井ノ上(匠技研工業) 具体的に、どういったところにズレを感じていたのでしょうか。
坂口 様: 私は工数担当になる前に工程担当をしていましたので、現場のオペレータの方と日常的にコミュニケーションを取っていたんです。当時から「この工数ではできるわけがない」といった厳しい声をいただくこともよくあり、見積りと現場の認識にはズレがあるなとは感じていました。そこで、実際に自分が見積をやってみたところ、「こういうことだったのか」と腑に落ちました。やはり、そこには明確なズレが存在していました。
──井ノ上(匠技研工業) そこから「変えよう」という行動に移されたきっかけは何だったのでしょうか。
坂口 様: 自分が出している工数には責任がありますから、根拠が曖昧なまま出し続けるのは無責任ではないか、と感じていました。そのため、少しでもこの状況を動かせればと思いました。
もう一つは損益の問題です。当社の生産センターもPLを管理しており、損益の黒字化が求められています。基本的には機械単価×工数で原価を算出していたので、工数の根本を見直さない限り収支をプラスにすることはできないわけです。機械単価は私たちの担当領域ではありませんが、工数は自分たちでコントロールできる部分でした。それなら、「ここに手を加えるべきではないか」と思ったのがきっかけですね。
「一気通貫でできる会社は、ここしかなかった」── 約1年の検討を経て匠技研工業を選定
──井ノ上(匠技研工業) 匠技研工業を知ったきっかけと、選定の決め手を教えてください。
藤本 様: 2024年のものづくりワールド東京でお話しさせていただいたのがきっかけです。そこから検討には1年ほどかけました。現場検証に半年費やし、市場調査にも時間をかけています。
ソフトウェアを選定する時点で、私たちのやりたいことが実現できる会社は2社ほどしか残りませんでした。さらに実際の加工のプロセスまでがマッチするかという点になると、匠技研さんしかありませんでした。
というのも、当社がお願いしたいのは、加工のロジックそのものを構築する上流のフェーズだったのです。これを別のコンサルに入ってもらうと、今度はソフトウェアとの紐付けが非常に大変になります。実際にコンサルも調査したのですが、大枠の戦略提案にとどまるコンサルが多くて、加工の細かい話に対応できるところがありませんでした。技術士事務所に頼むという選択肢もありましたが、やはりソフトウェアとの連携に課題が残ります。結局、これらを一つのパッケージとしてお願いできるのは匠技研さんしかいませんでした。
──井ノ上(匠技研工業) 坂口さんから見た決め手はいかがですか。
坂口 様: 藤本と同じ理由にはなりますが、やはり理論式の構築からソフトウェアの導入まで、一気通貫でお願いできる点ですね。そこが一番の決め手です。
──井ノ上(匠技研工業) 岡田さんは、匠技研工業が入るとなった時にどう思われましたか。
岡田 様: 見積基準の作成や、それを刷新すること自体、ものすごく難しいことなんです。当社でも過去に、自社で構築した仕組みが破綻してしまった経緯がありますから、そうした仕組みをきちんと構築できる会社があるということ自体、本当に驚きでした。正直、そのような会社は他にはないのではないかと思います。
「説明できるようになった」── 取り組み開始3か月で生まれた確かな変化

──井ノ上(匠技研工業) 2026年2月からプロジェクトが本格始動し、約3か月が経ちました。手ごたえを教えてください。
藤本 様:当初想定していたイメージとのギャップはほとんどありませんね。むしろ、思った以上に緻密にやっていただけていると感じています。もっとざっくりした進め方を想像していたので、かなり精度の高い仕組みができあがるのではないかと、期待感が高まっています。
──井ノ上(匠技研工業) 坂口さんはいかがですか。
坂口 様: 一番大きいのは、工数の根拠が理論的に説明できるようになったことです。以前はカンパニーのコスト担当から「なぜこの金額(工数)なのか」と聞かれても、明確なロジックがなくて説明に困っていました。それが今ではきちんと説明できるようになりつつあります。現場のオペレータにも妥当性を開示できるようになりましたし、これは本当に大きな変化だと思います。
──井ノ上(匠技研工業) 岡田さんからも、感じられている変化があれば教えてください。
岡田 様: やはり、理論の「中身」が見えるようになったことですね。これによって将来的に条件が変わった時にも自分たちでメンテナンスができます。これからも長く維持管理していけるものができあがれば、という期待を持っています。
──井ノ上(匠技研工業) プロジェクトを進める中で、(各種工程の)シミュレーション動画をご提供いただいたのが大きかったです。
坂口 様: 正直にお話すると、最初にシミュレーション動画やデータをお渡しした段階では、数値として「きれいにまとまるのだろうか」という不安もありました。ですが、戻って来た結果を確認した時に、一気に希望が見えました。特に正面フライスでほぼブレなく工数を算出できた時は、「これならいけるかもしれない」と。シミュレーションと実績がこれほど近いと確認できたのは、匠技研さんと一緒に取り組んで初めて見えてきたことなので、今のやり方に自信を持てるようになっています。
「常に変わり続ける見積」を目指して ── 全加工種±15%の精度実現へ
──井ノ上(匠技研工業) 今後の展望についてお聞かせください。
藤本 様: まずは、すべての工程において妥当性のある工数算出ができるようになることです。数値的な目標としては、全加工種にわたって「精度±15%」を実現することを目指しています。
坂口 様: まずは今進めている計算ロジック構築を確実に形にして、その後のシステム導入から運用の定着までを一つのプロジェクトとしてしっかりと完走させたいですね。さらにその先の展望として、構築したロジックをベースに実際の加工実績データとの突き合わせにも挑戦していきたいです。現場からのフィードバックを常に見積りに反映させて精度を高めていく、「常に変わり続ける見積り」の仕組みを実現できればと思っています。
岡田 様: まずは見積基準がすべてできあがることが第一の山ですね。その先で匠フォースを実際に使うフェーズも楽しみにしています。
同じ課題を持つ製造業の皆様へ

──井ノ上(匠技研工業) 工数算出のブラックボックス化に悩む他の製造業の方々に、メッセージをいただけますか。
藤本 様: 以前から設定されている工数をそのまま使っているという話は、他社さんでもよく耳にします。私たちもまだプロジェクトが始まったばかりですが、匠技研さんに相談すれば、かゆいところに手が届くような丁寧な対応をしていただけます。こちらからの要望を真摯に受け止めてくださるだけでなく、多少の無理な相談であっても調整して形にしてくれる。ですから、まずは皆さんの率直な思いや要望をぶつけてみてほしいですね。
坂口 様: 見積りの工数算出や標準化の仕組みを構築することは、決して容易なものではありませんし、同じように悩んでいる企業はたくさんあると思います。でも、そこから目を背けずにしっかり向かって仕組みを整えることができれば、根拠に基づいた説明力と再現性が生まれ、組織をより強固なものできるはずです。もし、悩まれているのあれば、匠技研さんのような信頼できる外部パートナーの手を借りるのが一番の近道だと思います。自社内だけでは見落としがちな視点からもアドバイスをいただけますので、まずは恐れずに一歩踏み出していただきたいです。
岡田 様: 見積基準の作成という上流工程から実際のソフトウェアの導入まで、すべてを一気通貫でサポートしてくれる心強い会社があるということを、ぜひ同じ悩みを持つ多くの方に知っていただきたいです。
編集後記
長年にわたり課題と認識しながらもリソースの制約から着手できずにいた工数算出の見直しに、ついに踏み出した芝浦機械様。課題解決ができなかった過去の経験を経てなお、もう一度挑戦する──その覚悟と、坂口 様の「少しでもこの状況を動かせれば」という言葉に、現場を変えたいという強い意志を感じました。ゼロから理論式を構築し、加工の思考プロセスそのものを明文化するところからご一緒するのは、匠技研工業にとってもここまで深く入り込む初めてのケースです。全工程±15%の精度達成に向けて、全力で伴走してまいります。
(カスタマーサクセス 井ノ上 和樹)

監修者
井ノ上 和樹
(
いのうえ・かずき
)
|
カスタマーサクセス
匠技研工業株式会社
出身校:東京大学(経済学部)
前職:大手商社(海外営業:東南アジア/オセアニア 担当)
大学では油田掘削における日本企業の海外進出の可能性について研究。
卒業後は大手商社に入社し、数十億円規模の取引や新規事業プロジェクトに参画。
ダイナミックな事業を通して、多様な業務を経験する中で、「会社に守られるのではなく、自分の力で事業を創り出したい」という想いを強め、スタートアップへの転身を決意する。
2024年、匠技研工業に1人目の営業メンバーとしてジョイン。
製造業界に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を通じて、製造現場の業務改善・標準化支援に取り組んでいる。
現場の声に耳を傾け、生の課題に触れることを信条とし、会社のバリューである「現場・現物・現実」の価値観を体現。
製造業界全体を盛り上げ、「日本のものづくりの復権」に貢献することを目指している。
おすすめの導入事例記事
RECOMMEND
導入事例一覧へ



