
匠フォース
公開日:
見積時間を10分の1に短縮! ひとりの匠が守り続けた見積ナレッジを会社の資産に
具体的な課題と導入効果
導入前
見積を担えるのは実質1名。作業はすべて定時以降に
図面1枚の原価積算に約1時間かかり、材料単価は複数の資料を横断して手作業で探すしかなかった。部品点数100点規模の装置案件の見積は、2週間ほどの時間を要していた。日中は製造現場の対応に追われるため見積作業は定時以降に回り、残業は多いときで1日7〜8時間に達していた。見積回答が間に合わず、失注することもあった。
導入後
見積時間は10分の1へ。設計担当者も見積作成を担うチーム体制に
材料マスタの整備により材料単価の設定が即時化。部品の見積時間は10分の1に。残業前提だった業務は定時内の2〜3時間に収まり、装置案件の見積時間も3日ほどへ短縮した。過去の工数を参照して積算できるため人為的なミスが減り、見積の出し値も安定。現在は設計担当者が自身の案件に加えて網野部長の見積案件も一部担い、もう1名を加えた3名チームでの見積体制を見据えている。
静岡県駿東郡長泉町。長泉工業団地の一角に、日商産業株式会社様の本社工場があります。
エンジニアプラスチックの精密加工・組立を担う同社は、半導体製造装置、工作機械、医療機器業界をメインに、幅広い業界のお客様と取り引きをされています。
しかし、その受注の起点となる見積業務を担えるのは、社内でただ一人だけでした。
「見積業務は絶対的に経験が必要なんです。全ての業務を理解していないと成り立たない。その人間が、たまたま私だったんです」
そう語るのは製造部 部長の網野様。入社30年、見積を担当して15年以上のベテランです。当時、日中は製造現場のマネジメントやフォローに追われ、見積業務に着手できるのは定時以降。多いときには、残業が1日7〜8時間に及ぶこともありました。
そんな状況を動かしたのは、社長からのある一言でした。匠フォース導入によって、一人の匠が守り続けた見積業務を標準化し、会社の資産へと変えるまでの歩みをお伝えします。
■ 会社概要
社名:日商産業株式会社
所在地:静岡県駿東郡長泉町
事業内容:半導体製造装置の設計・製作/液晶ディスプレイ(LCD)製造装置用処理槽(樹脂製)の製造/エンジニアプラスチックの精密機械加工/医療機器の設計・製作/射出成形品/樹脂製配管部品の加工
設立:1978年2月1日
従業員数:48名
インタビューにご協力いただいた方
日商産業株式会社
製造部 部長 網野 信 様
匠技研工業
カスタマーサクセス 井ノ上 和樹
※本記事の掲載内容はすべて取材時(2026年8月)の情報に基づいています。
見積を担えるのは1名のみ──深い製造知見を前提とした高難易度の見積業務

──井ノ上(匠技研工業):まずは御社の事業内容と強みを教えてください。
網野様(製造部 部長):主力事業はエンジニアプラスチックの精密機械加工です。半導体製造装置や液晶ディスプレイ製造装置の部品から医療機器まで、設計・加工・組立を社内で一貫して手がけています。お客様の業界としては、半導体、工作機械、医療機器の3つが柱です。一つの業界に偏らないようバランスを取るのが、先代社長から受け継いできた方針でした。こうした幅広い業界への対応力を評価いただき、おかげさまで、ほとんどのお客様と商社を挟まずに直接お取引をさせていただいております。
──井ノ上(匠技研工業):その中で、網野様が見積を担当されるようになった経緯を教えてください。
網野様(製造部 部長):私は入社してちょうど30年になります。最初の5〜6年は製造現場を経験し、15年ほど前に、社長から見積業務を任されました。以来ずっと、見積業務を担当しています。
当時は見積を作る仕組みもなかったので、Excelを用いて手探りで見積書の様式を作っていきました。ただ、私はソフトウェアの専門家ではありませんから、マクロのような自動化の仕組みは作れません。なので見積書を作るたびに、計算式を1行ずつ手で入力していました。1行で終わる見積もあれば、20行、30行に及ぶものもあります。行ごとに材料も加工内容も違うので、同じ数式を使い回すことができないんです。1枚の見積書を仕上げるのに、とにかく時間がかかっていました。
──井ノ上(匠技研工業):図面1枚あたり、見積時間はどのくらいかかっていたのでしょうか。
網野様(製造部 部長):1枚でも1時間くらいかかっていました。まず図面を見て材料が何かを判断し、単価を調べ、寸法から取り数を計算して、ようやく材料費が出ます。そこから機械加工や手加工の項目を作り、それぞれに加工時間を当てはめて集計する。そこまでやって初めて、製品1個あたりの原価積算ができるんです。
とにかく材料の単価を調べる作業に時間がかかっていました。当時は情報が整理されていなかったので、あちこちの資料を探し回らなければなりませんでした。
──井ノ上(匠技研工業):見積はどれくらいの量に対応されていたのでしょうか。
網野様(製造部 部長):例えば1週間に数件なら良いのですが、幸いなことに図面は次々に届きます。細かいものだと、1週間で30〜40件は対応していました。大きいものでは装置1台分の見積で図面が100枚ほどあり、この規模の案件になると、見積に2週間ほどかかっていました。
また、私は日中は工場に出て、現場全体を見なければいけませんでした。人手が足りないときは自分も現場作業に入りますし、お客様との打ち合わせや、組立図を部品ごとの図面にばらす作業もあります。そうした業務に追われるのでどうしても日中は時間が取れず、見積に使えるのは定時以降の残業時間だけでした。
──井ノ上(匠技研工業):当時の残業時間はどのくらいだったのでしょうか。
網野様(製造部 部長):多いときは1日7〜8時間です。日付が変わることも珍しくありませんでした。1週間に直すと35〜40時間くらいですね。見積に集中できるのはどうしても夜しかなかったのですが、当時はその働き方が当たり前だと思っていました。
──井ノ上(匠技研工業):お1人でその量の見積業務を対応することで、トラブルや損失はありましたか。
網野様(製造部 部長):見積の回答速度の面で課題を感じていました。もちろんお客様の見積依頼には回答期限があります。私の作業が追いつかず、提出したときにはすでに期限が過ぎていた、ということもありました。そうなると、その案件は他社に流れてしまいます。
──井ノ上(匠技研工業):当時、網野様以外に見積ができる方を増やそうという動きはあったのでしょうか。
網野様(製造部 部長):なかったですね。結局、見積業務は絶対的に経験が必要なんです。全ての製造工程を理解していないと成り立たない。その人間が、たまたま私だったんです。
仮に全ての業務を理解している人間がいたとしても、現場作業に就いていれば見積はできません。当社は全員が兼業なんです。ほとんどの社員が複数の機械を扱い、機械の手が空けば手作業にも入る。多能工が多いからこそ、複数の工程を同時並行で重ねられ、だからこそ工程を詰め、他社にはできない納期を実現できていました。人員に余裕もなく、習得難易度の高い見積業務を誰かに教えるという発想自体が、そもそもありませんでした。
「あなたももう長くないんだから」──社長の一言で始まった見積システム選定
──井ノ上(匠技研工業):そこから見積のシステムを探し始めた。そのきっかけは何だったのでしょうか。
網野様(製造部 部長):きっかけは社長です。「まず見積業務を何とかしよう。適切なシステムを見つけ、導入を進めて欲しい」と。「網野がやっている見積を、誰でもできるようにして欲しい。あなたももう長くないんだから」と言われまして。それなら探しましょう、と動き始めました。
しかし、これがなかなか見つかりませんでした。まず近隣のソフトウェア会社をあたりました。CADを導入したときからお付き合いのある会社です。販売管理や売上管理のシステムならいろいろな会社が作っていましたが、見積を作るためのシステムがなかった。本当にどこにもなかったんです。
──井ノ上(匠技研工業):そこから、どうやって匠フォースにたどり着かれたのでしょうか。
網野様(製造部 部長):複合機の関係でお取引のあった会社にも聞いてみたところ、匠技研工業さんを教えてくれました。そこからすぐに「会いましょう」という段取りになり、実際に会って話を聞いたところ、「これならいける」と感じました。
汎用の型に収まらない業務。決め手はカスタマイズ性

──井ノ上(匠技研工業):匠フォースで、「これならいける」と思われたポイントは、どこだったのでしょうか。
網野様(製造部 部長):まず、類似図面を簡単に探せること。それから、過去に作った見積と照らし合わせられること。そして、当社のやり方に合わせてカスタマイズできることです。特にカスタマイズできるというのは、一番の強みだと感じました。
システム選定の際、「既製品なのでこの方法しかありません」と言われてしまうと、なかなか導入には踏み切れないんです。当社の業務は、何をやっても普通の型にはまりませんから。CADソフトを選んだときもそうでした。多くの会社は「この基本ソフトをこのまま使ってください」という姿勢です。その中で、選定したCADソフトは開発部隊に要望を伝えれば、時間がかかっても改善していくと言ってくれた。だから選んで、時間をかけて自社に合うものを作ってもらってきました。匠フォースを選んだ考え方も、それと同じです。
「どう楽に引き出せるか」から設計し直した材料マスタ
──井ノ上(匠技研工業):匠フォース導入にあたって、一番時間をかけたのはどこでしたか。
網野様(製造部 部長):材料マスタ(材料の品名と単価を登録したデータベース)作りですね。ここが当社の見積業務デジタル化のポイントだと思っていました。あれだけの物量をどうやってマスタに登録するか。そして、登録した材料データを、どうすれば楽に引き出せるか。以前は、材料を探す時間が一番かかっていましたから。
材料マスタの絞り込みは、形状、材質、種類、色相、サイズという順番で固めていきました。私であれば材料の情報が最初から分かっている状態で始められますが、将来的に別のメンバーが使うことを想定すると、材質と形状から辿れる形のほうがいい──そういうやり取りを重ねて、今の形に落ち着きました。
──井ノ上(匠技研工業):樹脂加工は板物、丸棒、パイプ、配管材と種類が多く、組み合わせも非常に膨大でしたね。材料まわりの作業は、匠フォース導入前と後でどう変わりましたか。
網野様(製造部 部長):以前は、パソコンの中のフォルダを長時間探し回っていました。それが今は、もう一瞬です。圧倒的に早くなりました。
加工工数の計算も同じです。以前は毎回、計算式を手で入力して表を作っていましたが、今は加工時間を入れるだけで計算が完了します。裏側の計算式は、すべて匠フォースが持ってくれていますから。
残業前提だった見積業務が、定時内の2〜3時間に

──井ノ上(匠技研工業):以前は部品点数100点規模の装置案件で2週間ほどかかっていた、と伺っています。見積にかける時間は、どう変わりましたか。
網野様(製造部 部長):以前は残業時間をすべて見積業務に充てていましたが、今では1日8時間の勤務のうち、2〜3時間ほどで収まるようになりました。
シンプルな部品加工の案件は体感で10分の1になりましたね。大きな装置案件はどうしても3日くらいはかかりますが、導入前に2週間かけていた事を考えると、大幅な短縮です。
──井ノ上(匠技研工業):見積金額の精度への影響はいかがでしょうか。
網野様(製造部 部長):見積のミスが減りました。以前は自分で組んだ計算式でやっていたので、工数の入れ忘れや、材料費の計算が合っていないといったことが起こり得たんです。計算式を入れたつもりで、入っていなかったこともあります。今は計算式はシステム側で持ち、数字を入れるだけですからミスが減りましたし、見直しの手間もなくなりました。
金額の面では、案件番号が分かれば過去の見積の工数がすべて見られます。それを参照して同じような工数を入れていくので、誰がやっても一定の金額で見積ができる。原価積算が平準化して、見積の出し値も安定してきました。お客様から「なんで今回はこんなに高いんだ」と言われることもなくなってきています。
散らばっていた現場の力を、ひとつにする。
匠フォースは、製造業のためのオールインワンAIサービスです。図面管理、見積・原価計算、現場ナレッジを一元的に集約し、ベテランの頭の中や紙・エクセルに眠っていた技術やノウハウをデジタル資産として蓄積。AIが日々の業務をアシストすることで、業務の標準化・効率化だけでなく、工場経営そのものを強化します。
製造業の業務プロセスを深く理解した専門チームが、導入設計から現場への定着まで一貫して伴走。上場企業から町工場まで、幅広い製造現場でご活用いただいています。
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画面操作を教えただけで引継ぎができる。複数人で見積を担う体制に
──井ノ上(匠技研工業):数字の変化を伺ってきましたが、導入の目的に据えられていたのは「見積業務を誰でもできるようにする」ことでした。現在、見積は何名で担当されていますか。
網野様(製造部 部長):設計担当者が1名、見積業務に加わっています。その彼が、全ての設計をやりながら見積もやってくれている。自分が設計した製品を、そのまま匠フォースで見積にしています。
──井ノ上(匠技研工業):引継ぎはどのように進めたのでしょうか。
網野様(製造部 部長):最初に1回だけ、画面を見せながら教えました。材料の選び方と、材料取りの寸法の入れ方。画面をクリックすればメーカーと材質の候補が出てきて、選べば単価が出る。取り数は寸法を入れれば自動で計算される。あとは機械加工・手加工・組立と、工数の項目を足していくだけ。大まかなことだけを教えて、あとはもう渡して終わりでした。匠フォースには基本的な見積ロジックが搭載されているので、今は自分のやり方で好きに使いこなしていますよ。
──井ノ上(匠技研工業):その方が作られた見積と、網野様が作られた見積とで、金額に差は出ないのでしょうか。
網野様(製造部 部長):過去見積の実績が見られますから、それを元に計算すれば、遜色のない見積を作ってくれます。私が手一杯の時は、彼が自分の設計案件のみならず私の見積案件も積極的に担ってくれています。私しかできなかった見積業務をシステムで標準化していく、というところは、着実に進んでいると思います。
数年に1回だった材料の価格改定が、3か月に1回へ
──井ノ上(匠技研工業):導入後も2か月に1回の定例でやり取りを重ねています。運用面で変化はありましたか。
網野様(製造部 部長):材料価格改定への対応ですね。以前は数年に1回、物によっては10年間同じ価格ということもありました。それがここ2年で、3か月に1回のペースに変わったんです。原油の輸入情勢が変わってから、材料の値動きが激しくなりました。
──井ノ上(匠技研工業):材料単価が頻繁に更新される前提で、システムも運用も進化させていかなければならないと考えています。4月の定例では、価格表の改訂で600品を超えるマスタ更新が発生した際に、一括更新の仕組みをご案内しました。こうした定例MTGでのやり取りは、いかがでしょうか。
網野様(製造部 部長):あの600品の更新は、それまでならお客様から届くPDFを見ながら、該当する材料を探してExcelに金額を転記していました。その手間が、今回は楽になりました。
要望はまだありますよ。当社はマスタのページ数が多いので、何がどこに載っているのか、目次のようなものが欲しい。Excelのように開いて編集できれば、一番楽です。見やすくなれば、それだけ業務全体がやりやすくなりますから。そうした要望が出しやすいのも、定例MTGがあるおかげだと思っています。
見積の担い手は2名から、3名チームへ

──井ノ上(匠技研工業):今後の展望を教えてください。
網野様(製造部 部長):システムによる見積の標準化は、徐々に実現できています。近いうちに、もう1人も見積業務を担えるようにします。そうなれば3名体制です。
私が30年かけて積み上げてきた経験は、もう私一人の頭の中だけにあるものではありません。匠フォースを通して会社の資産になり始めています。「網野がやっている見積を、誰でもできるように」という社長の宿題に、ようやく答えが出せそうです。
編集後記
「見積業務は絶対的に経験が必要なんです」この網野様のお言葉は、あらゆる工程を熟知されている”匠”だからこそ辿り着ける言葉なのだと思います。
その”匠”の知恵を匠フォースの力で標準化し、組織全体の揺るぎない「資産」へと変えていく──。次世代へ繋ぐこの重要な変革を、これからも最前線で伴走し、力強く支えて参ります。
カスタマーサクセス 井ノ上 和樹

監修者
井ノ上 和樹
(
いのうえ・かずき
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カスタマーサクセス
匠技研工業株式会社
出身校:東京大学(経済学部)
前職:大手商社(海外営業:東南アジア/オセアニア 担当)
大学では油田掘削における日本企業の海外進出の可能性について研究。
卒業後は大手商社に入社し、数十億円規模の取引や新規事業プロジェクトに参画。
ダイナミックな事業を通して、多様な業務を経験する中で、「会社に守られるのではなく、自分の力で事業を創り出したい」という想いを強め、スタートアップへの転身を決意する。
2024年、匠技研工業に1人目の営業メンバーとしてジョイン。
製造業界に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を通じて、製造現場の業務改善・標準化支援に取り組んでいる。
現場の声に耳を傾け、生の課題に触れることを信条とし、会社のバリューである「現場・現物・現実」の価値観を体現。
製造業界全体を盛り上げ、「日本のものづくりの復権」に貢献することを目指している。








