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見積が「経営の物差し」へ。データで自社の"勝ち筋"を見出し、付加価値で選ばれる会社に
具体的な課題と導入効果
導入前
週100件超の見積が社長1人に集中。業務時間の8割を占めた「こなすだけ」の見積
朝礼の後も、従業員が帰った深夜も見積に向かい、業務時間の8割を見積作業が占めていた。値決めの物差しを持たないまま数をこなすため、同じ図面の再見積で金額がぶれることもあった。振り返りや分析、経営者としての戦略的思考に充てる時間は残らなかった。
導入後
部品の見積時間は10分の1へ。生まれた時間が、自社の"勝ち筋"を見極める時間に
チャージレートの設計により、誰が入力しても同じ金額が出せる見積基準が完成し、部品の見積時間は10分の1に短縮。生まれた時間で使用設備・段取時間・材料などの条件を変えて試算し、自社が付加価値を出せる加工・製品群を見極められるようになった。匠フォースは値決めと現場改善をつなぐ起点として機能している。
静岡県田方郡函南町。伊豆半島の玄関口に工場を構える有限会社石橋製作所様は、金属部品のプレス加工・組立や、金型の設計・製造を手がけています。
量産部品を主力としながら「何個以上でなければ受けない」という最低ロットは設けません。高い精度を必要とする難案件にも果敢に挑戦し、ロット数ではなく付加価値で仕事を受ける——それが同社の受注の基準です。
そんな石橋製作所様の大きな課題となっていたのは、見積を担えるのが石橋社長ただひとり、ということでした。週に100件を超える見積依頼に追われ、業務時間の8割が見積作業に消えていく。朝礼のあとも、従業員が帰ったあとの深夜も、見積と向き合う日々が続いていました。
2代目として会社を引き継ぎ、厳しい市況の変化も経験してきた石橋様にとって、経営者として本来やるべき仕事に向き合えていない日々でもありました。
そんな状況が動いたきっかけは、取引銀行からの紹介でした。匠フォースの導入によって生まれた経営者としての時間が、自社の"勝ち筋"を照らし、強い企業体質を築くまでの歩みをお伝えします。
■ 会社概要
社名:有限会社石橋製作所
所在地:静岡県田方郡函南町
事業内容:金属プレス部品の製造/金属プレス金型・治具の設計・製作/金属板金加工・金属部品加工
設立:1969年5月2日
従業員数:31名
インタビューにご協力いただいた方
有限会社石橋製作所
取締役 石橋 達也 様
匠技研工業
カスタマーサクセス 井ノ上 和樹
※本記事の掲載内容はすべて取材時(2026年8月)の情報に基づいています。
週100件超の見積を、たった1人で。業務時間の8割を占めた「こなすだけ」の見積

──井ノ上(匠技研工業):まずは、御社の事業内容と強みを教えてください。
石橋様(取締役):プレス加工をメインとした金属部品と金型の設計・製造を行っています。塑性加工(プレス加工)から切削加工まで、一通りを複合して担えることが特徴です。「この部品はプレスで」「これは切削で」と加工方法を先に決めるのではなく、テーマとなる部品があったときに、どの方法でやれば品質・コスト・デリバリーが守れるかを考えて提案できる。クオリティのレベルも、比較的高いところにあると自負しています。
もうひとつ特色を挙げるなら、プレスは基本的に大量生産用の設備なので、数にこだわる加工会社が多いんです。何個以上でなければ受けない、というように。でも弊社はそこにあまりこだわりがなく、どちらかと言うと付加価値が基準です。加工数が3個でも4個でも5個でも、その仕事を弊社が担うことでお客様の利益となり、必要となる技術が弊社の財産になるのなら受けます。
──井ノ上(匠技研工業):量産の多い会社様として、稀有なスタンスですね。石橋様が会社を引き継がれた当時のことを教えてください。
石橋様(取締役):当時はまだ昔ながらの下請け構造がありました。大きなメーカーさんの一連の系列に入るような形で、上流から流れてくる仕事を受ける。金額も「この部品はいくら」と既に決まっていて、あとは下流側の誰がやるか、という世界です。ですから原価管理なんていうものは全くなくて、上流のメーカーさんについていけば食べていける。そういう思想の会社でした。
それが崩壊したのが2000年頃です。売上の大部分を占めていたお客様の仕事が海外にシフトし、半分ぐらいの仕事が3か月で無くなってしまった。もう忘れようにも忘れられない経験です。ちょうど私が会社を引き継いだ直後で、どのように交渉するかというノウハウが無く、お客様の仰ることをまともに受け、それでも従業員の雇用は守りました。
それから25年、常に仕事を追い続けてきました。目一杯仕事が入ったのは2018年です。ただ、受注がいっぱいになってからも、まだ盲目的に新規の案件を追いかけていました。
──井ノ上(匠技研工業):現在の石橋製作所様の背景には、そのような歩みがあったのですね。週に100件を超える見積を石橋様おひとりで対応されていたと伺っています。当時の一日の流れを教えてください。

石橋様(取締役):朝礼が終わるとすぐに見積業務に入って、日中は現場を見回って、夜、皆が帰ってからまた集中して見積をやる。そんな毎日でした。今は仕事の9割ぐらいが社長としての業務ですが、当時は8割ぐらいが見積業務だったんです。
そして、ひとりでそれだけ対応していると間違いも生じていました。特に自動車関係は、一次見積から五次見積くらいまで、同じような図面が何度も何度も届きます。毎回ゼロから必死に計算していると金額がぶれてしまうこともあり、「1回目はこれだけだったのに、今回はなんでこんなに高いんだ」と言われることが、昔は結構ありました。
見積の仕組みができていなかったこともあり、とにかく数をこなしているだけになっていました。見積に戦略性もなければ、何もなかったんです。振り返りや分析もできていませんでした。
──井ノ上(匠技研工業):当時のその状態は、どんな歪みを生んでいたのでしょうか。
石橋様(取締役):業界によって、物づくりの工程においてやらなければいけないことと、やらなくていいことが違うんです。自動車業界ではこれで良くても、半導体業界では駄目だ、というのが部品ごとにあります。
当時は、その線引きへの理解が及ばないまま量産に入ってしまうことがありました。ある案件では、お客様から品質面でのクレームをいただいてしまい、当初の工程になかった外観検査を追加することになりました。受注時の取り決めに入っていない工程ですから、当然その分の対価はいただけません。
一度始めてしまった作業を、お客様に「なしにしてください」と言うのは難しい。そういう歪みが、立ち止まって考える・分析する時間がないままに生じて、溜まっていったんだと思います。
「誰がやっても同じ見積が出てくる仕組みを」──決算書から始まったチャージレート設計
──井ノ上(匠技研工業):石橋製作所様との出会いは静岡銀行様のご紹介でした。弊社代表の前田と最初にお会いしたときの印象を覚えていらっしゃいますか。
石橋様(取締役):静岡銀行様から紹介のお話があって、その後すぐに来てくれました。とても行動が早かったのを覚えています。
正直に言えば、当時の私にはデジタル化の前提知識がなくて、匠フォースの中身は実は半分ぐらい分かっていなかったんです。けれども、すごい熱い人だということは分かりました。年齢で言えば30以上も若い人が、あれだけ熱く町工場をこうしたいと語るのを聞く機会は、それまでなかったですから。その熱量と真摯さで導入を決めました。
──井ノ上(匠技研工業):導入にあたって、どんなご要望を出されたのでしょうか。
石橋様(取締役):私がお願いしたのは一つだけです。部品のサイズ、材質、加工の内容を入れれば、誰がやっても同じ見積が出てくる仕組みがいい。営業が何人いても、誰がやっても「うちの工場でこの部品をやったらこの金額です」という標準の見積が出る。まずそういう状態が欲しかったんです。
実を言うと、チャージレート(1時間あたりの加工賃の基準単価)の適正化を期待して匠フォースを入れた覚えは私にはないんですよ。当時CSのご担当だった原さんがうまくヒアリングしてくれて、決算書などから弊社の今の状態と理想の状態を導き出してくれた。それが結果的に、チャージレートの適正化につながったんです。
見積時間は10分の1へ。「こなす見積」から「取りに行く見積」に変わった

──井ノ上(匠技研工業):匠フォース導入後、見積業務はどう変わったのでしょうか。
石橋様(取締役):見積時間は体感で10分の1くらいになりました。しかも標準化できているので、私がちょっと教えれば、ほかの従業員でもできます。
同じ図面の再見積でも、同じ金額が出せるようになりました。図面が若干変わったときも、こちらから先に気づけるので、「ここの寸法が変わったので、この部分が高くなります」という説明ができる。そこはすごく整理ができました。
一方、根拠のある適正価格を出せるようになった分、受注率は落ちました。
元々は、私が主観で「この仕事は引き受けたいな」と思えば安い見積を出していました。ただ、それは諸刃の剣なんです。例えば、1時間に500個できれば採算が合うけれど、400個だと損をする。本当は600個を狙いたい。そういう展開が、当時の私の頭の中では個々の部品において詰め切れていませんでした。
受注率が落ちたということは、裏を返せば、採算の合わない仕事を取らなくなったということでもあります。市況の変化により見積案件そのものが少なくなった時期もありますが、それでも売上を伸ばし続けてこられたのは、採算の合う案件に絞って取りに行けるようになったからだと考えています。
──井ノ上(匠技研工業):当初、見積業務効率化のために導入した匠フォースですが、効率化する見積そのものが減ってしまった。それでも価格を戻さなかったのは、なぜでしょうか。
石橋様(取締役):発想が変わったからだと思います。魅力的な案件や、うちでやると付加価値が大きい面白そうな案件は別として、そんなにガツガツ行かなくても今は経営は成り立っています。それなら、新規の案件を無茶な金額で取りに行くよりも、今やっている仕事を効率化したり、見直したほうが利益を生むんじゃないかと。当然ながら、効率の良い仕事へと変わっていけば残業代は少なくなります。
とはいえ売上は伸ばさなければいけないので、今ある仕事の効率を高めて、手が空いたところに、より付加価値の高い案件や、新しい業界の案件を入れていこうと考えています。匠フォースの導入で、考える余裕が生まれたこそ、戦略的な姿勢を取れるようになりました。
使用設備・段取・ロット等の複数条件を変えて試算。データが教えてくれた自社の「勝ち筋」
──井ノ上(匠技研工業):石橋製作所様の匠フォースの使い方は、見積を作るだけにとどまりません。改めて、どのようにお使いいただいているか教えてください。
石橋様(取締役):弊社では、お客様に提示する見積を、試算しながら複数パターン作成しています。一通り見積を出した後に、その案件の背景を踏まえて、使用する機械をワンランク落とせないか、段取時間を短くできないか、1か月に1回の生産を2か月に1回のまとめ生産にしたらいくらになるか、材料を輸入材に変えたらどうなるか。そうした試算を、全部匠フォース上でやっています。それを複数パターン用意しておき、お客様の反応を伺いながら提案するんです。
もちろん大きな差別化で言えば、他社にできないことをやる、他社が持っていない技術でやる、ということですけど、生産数で採算ラインをくぐれるだけでも、小さい範囲で言えば差別化なんですよね。そうやって分析していくと、自ずと自社の勝ちパターンが見えてくる。今はそういう案件を集中的に攻めています。
大量に見積をこなしていた頃は、必要に迫られてただ提出するだけの見積でした。今は、案件を無理に取りに行く見積という意識を持てています。
そして、これからやろうとしているのは、例えば「外観検査をしない場合はこれくらいの外観基準となります。」という金額ごとの品質の仕様部分までお客様にご提案することです。一切傷なしのスペシャル対応が必要なら外観検査を入れますが、その分コストは上がりますし、歩留まりも落ちる。普通で良いのか、とにかく安い方が良いのか、スペシャルをお望みなのか。ご注文をいただく以上は、弊社からしっかりと提案を行い、どれを選ぶかをお客様に決めていただこう、という取り組みです。当然、社内の基準や品質は高みを目指し続ける事は大前提です。
段取時間と生産目標数が、製造部の改善テーマに

──井ノ上(匠技研工業):見積上で置いた数字が、製造現場の改善にもつながり始めていると伺いました。
石橋様(取締役):金型の仕事を立ち上げる前の会議で、見積時に定めた段取時間と生産の目標数を上げるんです。それを達成するためにやるのは「ただ頑張る」ことではなく、製造部全体の改善活動です。段取に何分かかっている、なぜかかるんだろう、どうすれば短くできるんだろう、と深掘りしていく。その習慣ができると、その案件だけではなく、仕事全体の発想ややり方が変わってくる。その相乗効果を狙っています。
改善活動をやるときも、実際に取り組んでいるメンバーを呼んで、何分作業時間が縮まっているか、という体感と、実際の短縮時間を突き合わせながら確認をします。匠フォースを入れた裏側で始めたのが、出来高と不良率、歩留まり率を取ることなんです。
見積をする上で、今の自社で普通にやったらどれくらいの出来高で、どれくらいの不良が出るのか。当たり前のことですが、それを細かく数値で持っているというのが大きい。感覚と実際の数字が合っている人もいれば、合っていない人もいる。それをすり合わせできるのは、非常に重要だと思います。その数字があるからこそ、先ほど申し上げた金額ごとの納品成果のご提案をすることが可能になります。
導入したのは匠フォースという見積のシステムですが、会社全体の改善活動、採算の見直しにも使っている感じですね。実際に改善活動に取り組んでいる従業員の成長にもつながっています。導入効果としては、実はそこが一番大きいかも知れません。
散らばっていた現場の力を、ひとつにする。
匠フォースは、製造業のためのオールインワンAIサービスです。図面管理、見積・原価計算、現場ナレッジを一元的に集約し、ベテランの頭の中や紙・エクセルに眠っていた技術やノウハウをデジタル資産として蓄積。AIが日々の業務をアシストすることで、業務の標準化・効率化だけでなく、工場経営そのものを強化します。
製造業の業務プロセスを深く理解した専門チームが、導入設計から現場への定着まで一貫して伴走。上場企業から町工場まで、幅広い製造現場でご活用いただいています。
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ロボットと人の分業時代。「何ができるか、どこまでできるか」の勝負へ
──井ノ上(匠技研工業):もし匠フォースを導入されていなかったら、石橋製作所様の業務は今頃どうなっていたと思われますか。
石橋様(取締役):今までお話したようなことは、実現できていなかったと思います。目の前の仕事は今まで通りやっていたでしょうけれど、見積をどう標準化するか、どうすればみんながやりやすいか、どうすれば早くなるか。そういう発想は一切出てこなかったと思います。
匠フォース導入によって経営者としての時間が生まれ、会う人も変わりました。以前は仕事を取りに行くお客様に会うのがほとんどでしたが、今は異業種の方や銀行の方と話す機会が増えて、新しい情報も入ってくる。展示会も、自分が使うプレス機や工作機械のものしか行きませんでしたが、今はDXやAIの展示会にも行くようになりました。
匠フォーラム(匠フォースユーザー会)や、製造DX協会(匠技研工業が理事を務める、日本式製造DXによる業界変革を目指す団体)での学びや出会いも、とても大きな刺激になっています。

──井ノ上(匠技研工業):最後に、これからの未来をどう描いていらっしゃるか、そして同じように見積や原価計算に悩む町工場の皆さまへ、メッセージをお願いします。
石橋様(取締役):採算性というのは、儲からないからやめる、ということではありません。この案件でどうやって利益を出すか。を突き詰めて考え、進化させ、そこで出た利益を従業員や設備や自動化への投資に回し、レベルアップしていくことだと思っています。
理想を言えば、月に1,000個以上のものはすべて自動化やロボットに任せる時代が来るのが一番いい。人は工程設計や管理、分析といった、人がやるべきところをやる。ロボットやAIが入ってくると仕事がなくなってしまうのではなくて、ロボットやAIは適したところをやる、人は人で適したところをやる、という分業だと思うんです。少量生産にロボットは入れられませんから、そこには人の技術がいる。その組み合わせが大事なんです。
とんでもなく品質基準の高い案件など、無茶ぶりのような要求が来ると、口では「大変だ」と言いますが、内心ではチャンスだなと思っています。そういう案件は、海外はついてこられないですから。
そして、これからの町工場は、どの業界の部品を加工して存在しているかではなく、「何ができるか、どこまでできるか」の勝負です。お客様の需要や期待と、自分たちの実力にどれくらいの差があるのかを常に把握して、超える活動を止めないこと。そして、その活動が明るく前向きであること。そうやって、勝ち筋を増やしていきたいと思っています。
編集後記
匠フォースが値決めのツールから経営の物差しへ昇華していることを実感しました。
その物差しを、現場の改善と従業員の成長にまでつなげていらっしゃるのは、石橋社長ご自身が失敗を恐れず挑戦をし続けているからに他なりません。
CS担当として、新しい"勝ち筋"を共に見つけるべく、精一杯支援を続けてまいります。
カスタマーサクセス 井ノ上 和樹

監修者
井ノ上 和樹
(
いのうえ・かずき
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カスタマーサクセス
匠技研工業株式会社
出身校:東京大学(経済学部)
前職:大手商社(海外営業:東南アジア/オセアニア 担当)
大学では油田掘削における日本企業の海外進出の可能性について研究。
卒業後は大手商社に入社し、数十億円規模の取引や新規事業プロジェクトに参画。
ダイナミックな事業を通して、多様な業務を経験する中で、「会社に守られるのではなく、自分の力で事業を創り出したい」という想いを強め、スタートアップへの転身を決意する。
2024年、匠技研工業に1人目の営業メンバーとしてジョイン。
製造業界に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を通じて、製造現場の業務改善・標準化支援に取り組んでいる。
現場の声に耳を傾け、生の課題に触れることを信条とし、会社のバリューである「現場・現物・現実」の価値観を体現。
製造業界全体を盛り上げ、「日本のものづくりの復権」に貢献することを目指している。








