11時間の見積作業が1時間に!複数拠点の情報を一元管理し、スピーディーで正確な見積作成を実現!
2026.04.30
日本のモノづくりを根底で支える株式会社アンスコ様は、自動車や工作機械分野に不可欠な高強度の六角穴付きボルトを提供し、日本で唯一「ナイロン式ゆるみ止めねじ」の一貫生産を手掛けています。
しかし、その高度なモノづくりの起点となる見積業務の裏には、拠点間のメール往復によるタイムロスや、担当者ごとの図面散在といった属人化の課題が潜んでいました。
そうした中、AI図面管理・見積システム「匠フォース」を導入し、見積業務の仕組み化に挑戦。組織全体で「利益を稼ぎだす体質」へと変貌を遂げています。
「新しい携帯を買った時のようなワクワク感」を持ってシステム導入に挑んだという同社。組織一丸となって見積DXを成功させた軌跡を伺いました。
目次
■ 会社概要
- 社名:株式会社アンスコ
- 事業内容:高強度・高精度な六角穴付きボルト、止めねじの製造・販売
- 創業:1939年
- 従業員規模:120名
- 拠点:愛知(本社工場)、佐賀(九州工場)、タイ工場
- URL:https://ansco.co.jp/
インタビューにご協力いただいた皆様
株式会社アンスコ様
- 代表取締役社長 安藤 秀文 様
- 営業部 部長 岩永 圭一郎 様
- 営業部 営業1課 課長 山口 香織 様
匠技研工業
- カスタマーサクセス 井ノ上 和樹
- カスタマーサクセス 三島 健太郎
※本記事の掲載内容はすべて取材時(2026年1月)の情報に基づいています。

日本で唯一の技術と一貫生産の強み

──井ノ上(匠技研工業) まずは、アンスコ様の事業内容と、市場における強みについて教えてください。
安藤様(代表取締役社長):
当社は国内外3拠点において、高強度・高精度なねじ、特に「六角穴付きボルト」や「止めねじ」を専門に製造しています。私たちの最大の強みは、自社開発の設備を使うことによって競合他社よりも飛躍的に生産性を上げている点です。
さらに、お客様からの「絶対に緩まないねじが欲しい」というニーズにお応えするため、アメリカの会社と技術提携を行い、「ゆるみ止め加工」までを一貫生産できる体制を整えました。
通常、ねじを作る会社と加工する会社は別々であることが多く、その間のハンドリングに手間がかかりますが、当社は一貫して対応できるため、産業機械分野などで高く評価いただいています。また、ねじの製造とゆるみ止め加工を一貫生産しているのは日本で当社だけです。
「あの図面どこ?」担当者不在で止まる業務と、拠点間コミュニケーションの弊害

──井ノ上(匠技研工業)初めてお会いした頃に抱えていた経営課題について教えてください。
安藤様(代表取締役社長):
コロナ禍の後半から、私たちの業界では需要が爆発的に伸びました。非常に忙しい時期を経験し、その後少し落ち着きを見せ始めた2024年頃、私は改めて「会社の体質を根本から変えなければならない」と強く感じていました。
インフレで様々なコストが上がる中、既存案件においてもしっかりと利益を稼げるよう適正な価格交渉をしていく必要がありました。
同時に、既存案件だけでなく新商品を増やし、「新しい案件を伸ばしていかなければならない。」という強い課題感も持っていました。
ねじ業界は多品種であり、サイズも無数にあります。現状の売上構成比は低くとも、新規の案件を素早く、より精度よく見積していく体制は急務でした。

──三島(匠技研工業)私は前職でメーカーの調達部門におり、製造業の現場を多く見てきましたが、多品種を扱う企業様ほど「図面を探す時間」や「過去の見積の経緯を追う時間」に苦労されている印象があります。アンスコ様の現場でも、そういった効率性の課題はありましたか?
山口様(営業1課 課長):まさにその通りでした。これまでは図面の管理も各営業担当に任されていました。過去の似たような案件の見積をする際も、「類似図面は誰々さんが持っているらしい」というレベルで、担当者に直接聞いたり、その人の過去のデータを探したりするところからスタートしていたのです。
岩永様(営業部 部長):加えて、当社は愛知の本社と佐賀の九州工場で連携して業務を行っています。営業から製造部門へ製作可否の検討を依頼する際、以前はメールでやり取りをしていました。しかし、メールだと「読んだのか、読んでいないのか」「今どういう状況なのか」が全く把握できず、担当者が不在だと誰も状況が分からない状態に陥っていました。
お客様からお問い合わせをいただいても、「今確認しています」としかお答えできず、お時間をいただいてしまうことが度々ありました。
「新しい携帯を買った時のワクワク感」チームで挑んだシステム導入
──井ノ上(匠技研工業) そうした課題を抱える中、展示会で弊社の「匠フォース」を知っていただいたと伺っています。数あるシステムの中で、当社を選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?

安藤様(代表取締役社長):匠技研工業さんと出会う前から、他社の図面管理システムなどもお話を聞いていたのですが、費用面で高すぎたり、私たちの業態にマッチしなかったりと、なかなか納得のいくシステムは見つかりませんでした。
匠フォースを導入した決め手は大きく2つあります。
1つ目は、匠技研工業さんが「単品の加工業だけでなく、我々のような量産型の製造業の実績も増やし、そこにチャレンジしていきたい」とお話しいただいたことです。その姿勢が面白いと感じました。
そして2つ目は、実際にシステムを使う岩永や山口たち現場のメンバーから、「ぜひこれでやってみたい」という前向きな声が上がったことです。
──井ノ上(匠技研工業) 現場の方々からの「やってみたい」というお声は、非常に嬉しいです。新しいシステムを入れる際、社内で「今のやり方を変えたくない」という抵抗勢力が生まれることは珍しくありませんが、アンスコ様ではいかがでしたか?
岩永様(営業部 部長):社内の抵抗勢力は全くいませんでしたね。導入に際して、プロジェクトチームを作った時も、皆が「見積回答が遅い」「人によって質が違う」といった課題を共通認識として持っていました。 むしろ、匠フォースに対して「新しい携帯電話を買ったから使ってみたい」というようなワクワクした期待感があったんです。
特にベテラン社員が、分からないと言いながらも積極的に触ってくれて、すぐに回答をくれたりして、プロジェクトの出席率も非常に高かったです。「組織として課題を認識し、改善していきたい!」というモチベーションがみんなを動かしていたのだと思います。
「手厚いサポート」で乗り越えたシステム導入の壁
──井ノ上(匠技研工業) 匠フォースをスムーズに運用するために、工夫された点はありますか?
岩永様(営業部 部長):
導入の初期段階では、今まで行っていたアナログなプロセス(製作可否検討から見積作成まで)を、あえて大きく変えずにそのまま匠フォースへ搭載することにしました。
システム操作やPC環境に不慣れなスタッフもいるため、まずは入力作業への抵抗感を減らすことが重要です。そのため、スモールスタートとして、製作可否検討書のみを匠フォースに搭載することから始めました。
既存の用紙と極力同じレイアウトの画面をご用意いただき、自由入力ではなく選択式の項目を増やし、迷わず直感的に操作できるように作り込みをお願いしました。

──井ノ上(匠技研工業) その後、第2フェーズとして「原価計算」の機能を搭載していきました。非常に複雑なロジックを組む必要があったかと思いますが、壁はありましたか?
岩永様(営業部 部長):関数の計算式をどう組むかなど、システム側の専門的な設定については、正直私たちだけでは付いていけなくなる部分もありました。しかし、匠技研工業の和田さん(当時のCS担当者)が、素早く丁寧に対応してくれたおかげで乗り越えることができました。「ここが分からない」と相談するとすぐにシステムに反映してくれたり、週に1回の打合せで丁寧にシステムを作り込んでいけたことが成功の要因だと思っています。
私たちの手を離れる瞬間があっても、匠技研工業の方なら任せても大丈夫。という安心感がありました。
愛知と九州をリアルタイムでつなぐ。匠フォースによるステータスとデータの一元管理
──三島(匠技研工業)匠フォース導入前は見積作成に「6〜11時間」かかっていたものが、導入後は「1時間」になったと伺っています。この劇的な変化の裏で、現場では何が起きていたのでしょうか?

山口様(営業1課 課長):一番は「過去にどんな案件を扱ったか」を探す最初のスタートダッシュが圧倒的に早くなったことです。 匠フォースに図面をアップロードすると、AIが類似図面を一瞬で検索してくれます。
導入当初はねじの形が似ているため広くヒットしていましたが、使い続けてデータを蓄積するうちに、また機能がアップグレードされてからは、文字やわずかな形状の違いも読み取って、本当に同じ図面や関連する過去の案件がヒットするようになりました。
以前のように担当者に聞いて回る必要がなくなり、情報の抜け漏れもなくなりました 。
岩永様(営業部 部長):「メールでのやり取りによる不透明さ」が完全に解消され、製作可否検討のスピードも格段に上がりました。匠フォース上でステータスが管理されているため、愛知にいながら九州工場の進捗がリアルタイムで分かります。お客様から催促があっても、「今、技術部でこういった状況を確認中です」と、担当者不在でも誰もが正確に状況を説明できるようになりました。情報が一元管理されたことで、仕事の進め方が根本から変わりましたね。
誰でも適正価格をスピーディーに出せる組織へ
──井ノ上(匠技研工業) スピードだけでなく、原価情報の標準化という面でも効果は出ていますか?
岩永様(営業部 部長):
はい。匠フォース導入前は、既存品の精度の高い原価情報を持っていても、社内で十分に共有されていませんでした。また、まったくの新規品については原価計算のベースがなく、担当者の裁量に任されている部分がありました。
しかし、匠フォースに適切な原価積算ロジックを組んだことで、新規品であっても、誰がやっても無理のない、スピーディーで適正な価格設定(原価積算)が可能になりました。利益をしっかり確保するための標準化ができたことは、会社にとって非常に大きなメリットです。

5カ年計画で見据える未来。海外連携と地域への還元

──井ノ上(匠技研工業)アンスコ様の今後の展望を教えてください。
安藤様(代表取締役社長):今後は全ての案件で匠フォースを活用して、インフレ下でもしっかりと利益を稼ぐ体質を全社に根付かせていくことが第一です。
そして、次年度から新しい中期経営計画(5カ年計画)が始まります。目指す姿は、社員が今以上に自分の仕事に誇りを持ち、より多くのお客様から高い評価をいただくことです。
定量的には売上増加はもちろん、利益率の向上と資本効率の改善を目指します。 今後、海外戦略としてタイ工場との連携も強化していきます。タイからの図面や生産可否の検討も、今はメールベースですが、将来的には匠フォースで情報を共有していきたいと考えています。
また、地域とのつながりや貢献も非常に重要だと考えています。私たちがこの地で製造業として経営を良くし、新しい雇用を生み出し、地域の人々に喜んでもらえる存在になること。そのために、商工会議所などの地域ネットワークとも連携しながら、本業を通じて地域に貢献できる企業であり続けたいと強く思っています。
【編集後記】
日本で唯一の技術を武器に、「利益を稼ぐ体質」への変革、そして「社員が誇りを持てる会社づくり」と「地域への貢献」を見据える安藤社長の力強い眼差しに、担当として胸が熱くなりました。
日本が世界に誇るアンスコ様のモノづくりと、未来への挑戦を、これからも全力でサポートしてまいります。
カスタマーサクセス 井ノ上
属人化業務を、AI活用で“会社の資産”へ。
井ノ上 和樹(いのうえ・かずき)|匠技研工業株式会社 カスタマーサクセス
出身校:東京大学(経済学部)
前職:大手商社(海外営業:東南アジア/オセアニア 担当)
大学では油田掘削における日本企業の海外進出の可能性について研究。
卒業後は大手商社に入社し、数十億円規模の取引や新規事業プロジェクトに参画。
ダイナミックな事業を通して、多様な業務を経験する中で、「会社に守られるのではなく、自分の力で事業を創り出したい」という想いを強め、スタートアップへの転身を決意する。
2024年、匠技研工業に1人目の営業メンバーとしてジョイン。
製造業界に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」を通じて、製造現場の業務改善・標準化支援に取り組んでいる。
現場の声に耳を傾け、生の課題に触れることを信条とし、会社のバリューである「現場・現物・現実」の価値観を体現。
製造業界全体を盛り上げ、「日本のものづくりの復権」に貢献することを目指している。