AI見積システム「匠フォース」とは?機能や導入メリット、活用事例を紹介
2025.07.31

こうした課題を解決する手段として、匠技研工業ではAI見積システム「匠フォース」を開発しています。図面や過去の見積データをもとに、AIを活用して効率的かつ適正な見積作成を支援します。
本記事では、「匠フォース」の主要な機能、導入メリット、実際の活用事例について詳しく解説します。見積業務の属人化や非効率さに課題を感じている方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
匠フォースとは|基本機能を紹介

匠フォースは、図面管理から原価計算まで一元化できる、製造業向けのAI見積支援システムです。多品種少量生産を行う中小製造業では、見積業務の属人化や非効率が長年の課題とされてきました。匠フォースはこうした現場の悩みに応え、「効率化」「標準化」「適正化」を実現する機能を備えています。
ここでは、匠フォースが提供する主要な機能について、具体的に紹介します。
効率化につながる機能
これまで人手で行っていた見積業務を自動化し、作業負担を軽減する機能を紹介します。
過去の図面・見積情報を瞬時に検索
自社で蓄積してきた図面や見積データをもとに、AIが類似図面・類似見積を高速で検索します。この検索機能によって、過去の案件を探すためにかかっていた時間と手間を大幅に削減できます。さらに、検索結果から過去の見積内容をそのまま活用し、原価算出を行うことも可能です。ゼロからの積算作業が不要なので、見積作成のリードタイムを大幅に短縮できます。
匠フォースで類似図面の検索を行うには、具体的に次の3つの方法があります。
AI類似図面検索 | 部品の形状が似ている図面をAIが検索します |
AI-OCR(文字読取)検索 | 図面に書かれた文字情報をAIが読み取って検索します |
見積情報検索 | 登録した見積情報による絞り込み検索します |
過去の資料(図面やエクセルデータ)を匠フォースに取り込みデータ化する作業は、匠技研工業のメンバーがサポートします。社内にある過去データを提示すれば、匠フォースへのアップロード以降はすべて匠技研工業に任せられます。

図面差分表示で変更点を一目で把握
アップロードした図面と、過去に蓄積された類似図面との差分を自動で抽出・表示できます。
図面の変更点を短時間で把握でき、見落としのリスクを最小限に抑えられます。従来は時間と労力を要していた差分確認作業も、この機能により効率化され、より正確な見積と判断が行えるのが大きなメリットです。

図面の文字を自動登録するOCR機能
図面内に記載された図番や品名といったテキスト情報を、AIが自動で認識します。テキストデータだけでなく、書き込みも対象となっており、クリックひとつで見積項目に反映することも可能です。文字を自動登録できるため、同じ情報を何度も手入力する必要がなくなり、作業時間を削減できます。また、入力ミスのリスクも低減でき、見積精度の向上にもつながります。

標準化につながる機能
価格算出の方法を標準化し、社内で統一されたルールに基づいて見積を行えるようにする機能を紹介します。
見積テンプレートの搭載で業務を標準化
あらかじめ設定した見積ロジックや計算式をテンプレートとして搭載できます。このテンプレートを活用することによって、新入社員や事務担当者でも適切な見積作成が可能となり、属人化の解消につながり、担当者ごとの見積内容のばらつきをなくせます。複数のテンプレートを登録できるため、案件ごとに適したロジックを選択することも可能です。
なお、見積テンプレートの編集は制限されているため、意図しない改変を防止できます。
図面書き込み機能でノウハウを見える化・共有
図面に直接文字や注釈を書き込めるペイント機能が搭載されています。書き込みによって、図面上の重要な情報や製造に関する注意点を、システム上で一元管理できます。
従来は、口頭での伝達や紙ベースで共有されていたノウハウ・アドバイスが、データとして蓄積・共有されるため「技術の資産化」を実現できるのが魅力です。結果として、見積の属人化を防ぎ、組織としての見積技術の継承にもつながります。

適正化につながる機能
自社の過去の見積データや原材料価格をもとに、適正でかつ利益を最大化できる見積価格を導き出す機能を紹介します。
原価計算のコンサルティングの提供
匠フォースを導入した企業様に対し、匠技研工業の専門メンバーが原価計算のコンサルティングサービスを提供しています。コンサルティングを通じ、これまで経験に頼っていた原価算出から脱却し、論理的かつ再現性のある見積体制への転換を支援します。
コンサルティングの内容は、お客様のご要望、業種・業態や社内体制に応じてベストなコンサルティング内容を提案します。
見積結果のAI分析で業務改善を支援(開発中)
匠フォースは、現在、蓄積された見積金額・受注率・見積件数などのデータをAIが自動分析し、営業状況を可視化できる機能を開発中です。
分析結果に基づいて、受注率を高めるための価格設定や、改善すべき見積プロセスに関する示唆をAIが提供します。この機能によって売上や利益の最大化を支援する、戦略的な見積業務が期待できます。

匠フォースを導入するメリット
匠フォースには、導入企業の業務フローに深くフィットし、製造現場に即した見積業務の改善を実現するために、次の4つの特徴を備えています。
- 自社業務に合わせて柔軟にカスタマイズできる
- 類似図面検索から受失注管理まで、匠フォース上で一元化できる
- 導入前から運用後までフルサポートを受けられる
- ユーザーの要望に応じて、新機能が随時追加される
これらの特徴が、現場にどのような変化とメリットをもたらすのか、詳しく解説します。
自社に合わせてカスタマイズできる
匠フォースでは、各社固有の業務内容や運用ルールに応じて、見積ロジックを柔軟にカスタマイズできます。これにより、システム導入のために業務フローを大きく変更する必要がなく、現場への負担や混乱を最小限に抑えることが可能です。
たとえば、以下のような要素を企業ごとにカスタマイズできます。
材質や工程のマスタ情報 取り扱いのある材質や加工可能な工程、取引先企業の情報など、各社固有のマスタを自由自在に登録することができます。参照項目の列も自由に追加することが可能です | |
原価の算出ロジック 各社固有の見積ロジックをそのまま搭載できます。加減乗除・引数参照・ROUND関数など、エクセルと同様の計算式を使用できます | |
見積書のテンプレ 顧客ごとに見積書のテンプレを作成・事前登録できます。提出先ごとに見積書出力項目や計算ロジックを変更することが可能です |
見積業務を匠フォース上で一元化できる
見積に関わるすべてのプロセスを、匠フォース内で完結できます。各工程ごとに異なるツールを使う必要がなくなるため、業務の重複や情報の分断を解消できます。
なお、以下の業務はすべて匠フォース内で対応可能です。
- 類似案件・類似図面の検索
- 社内での見積計算
- 見積書の作成
- 見積書の出力
- 受失注管理・見積改善
さらに、匠フォースはEDI(電子データ交換)やFAX、メールなど外部システムとの連携にも対応しています。作成した見積書の送付や、受発注管理も一元化でき、業務全体の流れがスムーズになります。
導入前から運用後までフルサポートを受けられる
システム導入に伴う不安から導入後の現場定着の課題まで、匠技研工業のメンバーが継続して対応します。
新しいITシステムを導入する際、多くの現場で懸念されるのが「操作の不安」や「業務に定着するかどうか」という点です。そうした課題に対しても、導入前から運用後まで一貫したサポート体制を提供しています。
具体的には、まず導入検討段階では、匠技研工業の担当者が現場を訪問し、現状の業務フローや課題をヒアリングします。その上で、過不足のない機能構成やカスタマイズ方法を提案し、導入による業務改善の方向性を明確にするのが一般的なサポートのプロセスです。
匠フォース導入後は、月2回の定期打ち合わせを通じて、試験運用・データ移行・定着支援を段階的に実施します。さらに、使用中に不明点があれば、メール・電話・チャットなど複数チャネルによってすぐに問い合わせが可能です。新機能の追加や、他のDXツールの導入時にも、担当者が具体的な活用方法や業務への落とし込みを支援します。
要望に応じて新機能が追加される
匠技研工業は、ユーザーからの「サービスを使ってみて、こうしたい」「この業務にも活用したい」といった声に対して、迅速かつ柔軟に対応できる体制が整っているのが特長です。ユーザーの意見や現場からの要望(Voice of Customer、略してVoC)を積極的に収集し、製品改善に反映しています。実際に、定例ミーティングやユーザーイベント、さらにはチャットを通じた日常的なやりとりから、ヒアリングしたユーザーの要望を取り入れ、週に1件以上のペースで新機能がリリースされています。
VoCをもとに実装された機能には、以下のような例があります。
権限管理機能
権限管理機能は、「価格情報へのアクセスを役職や部署で制限したい」という複数の企業からの要望により開発された機能です。
所属部門やユーザーの役職に応じて、編集・削除・閲覧といった操作権限を細かく制御できるようにしました。この機能追加によって、情報の取り扱い体制をより明確にしつつ、業務に必要な情報だけを適切に共有することが可能になります。
3D CADビューワー
3D CADビューワーは、複雑な部品の見積や製造において、3D CADデータの取り扱いが不可欠になっている現場からの声に応えた機能です。
「2次元図面と3D CADデータを一元管理したい」というニーズに基づき、匠フォースは3D CADデータの管理・閲覧にも対応しました。部品形状の理解がしやすくなり、より正確かつスムーズな見積作成や製造現場との連携が可能になります。
匠フォースの導入事例
匠フォースは、全国各地の中小サプライヤー企業から大手製造業まで、幅広い業種・業態で導入が進んでいます。ここでは、その中から代表的な導入事例を2社ご紹介します。
事例1:見積業務の属人化から脱却し、リードタイムが今までの1/4に【有限会社今村精工様】
加工種:切削加工/従業員数:25名/所在地:長野県

今村精工様は、半導体製造装置・自動車部品・光学機器部品などに用いられる、高精度な金属部品の加工を手がける企業です。
匠フォース導入前は、見積業務を顧問が専任で担当しており、業務の属人化が深刻でした。他の社員が進捗状況を把握できず、問い合わせ対応のたびに顧問の所在確認をしなければならない状況が続いていたといいます。さらに、取引先から届く大量の見積依頼が1人に集中していたため、1件の見積作成に4〜5日を要し、案件の回答漏れも発生していました。
匠フォース導入後は、見積担当者を増員し、複数案件を並行処理できる体制へと移行。最短で当日中の見積回答が可能となり、回答漏れもゼロになりました。また、匠フォース上で進捗状況がリアルタイムで確認できるようになり、社内の連携や問い合わせ対応も格段にスピードアップしました。
今村精工様がどのように業務を改善したのか、詳しくは以下のインタビュー記事をご覧ください。
事例2:過去案件を一瞬で検索できるようになり、見積の作成時間が半分以下に【株式会社今野製作所様】
加工種:板金加工/従業員数:40名/所在地:東京都

今野製作所様は、個別受注生産型の板金加工業を手がける企業です。創業当初は理化学器機の製造を中心に事業を展開し、その後、板金加工・機械修理・油圧機器製造へと、時代に合わせて柔軟に事業を多角化してきました。
匠フォース導入前の見積業務は、加工時間や材料費を、紙の図面を見ながら手作業で計算・記録するというプロセスでした。そのため、1件ごとの見積に長時間を要していました。また、リピート案件であっても過去案件の図面や見積などを探すのに苦労し、イチから作成することも少なくありませんでした。このような非効率なフローが、業務全体の停滞を引き起こしていました。
匠フォースを導入し、外径・長さ・板厚・穴情報などのパラメーターをシステムに入力するだけで原価が自動積算され、見積に即反映されるようになりました。その結果、1件あたりの見積作成時間を、従来の半分以下に短縮できました。
さらに、過去図面・過去見積の自動検索機能を活用したことで、見積依頼への対応スピードと精度が上がり、社内の生産性が大幅に向上したといいます。
今野製作所様がどのように業務を改善したのか、詳しくは以下のインタビュー記事をご覧ください。
見積業務の課題解決には匠フォースをご活用ください
匠フォースは、製造業の見積をサポートするAI見積システムです。見積業務の「効率化」「標準化」「適正化」を一挙に実現できます。導入にあたっては、匠技研工業による丁寧なフルサポート体制が整っており、IT導入に不安のある企業でも安心してご利用いただけます。
実際に導入した企業で出ている成果は以下の通りです。
- 見積を担当できる社員の拡大
- 見積作成時間の大幅な短縮
- 回答漏れや属人化の解消
匠フォースを導入すれば、見積にかかっていた時間を、新規顧客開拓や新技術の検討など、より価値の高い活動へと再配分できるので、受注率や利益の最大化が期待できます。
見積業務に課題を感じている企業のご担当者さまは、ぜひ一度、匠技研工業までご相談ください。
よくある質問
- IT導入補助金は使えますか?
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現在(※2025年7月時点)IT導入補助金は使えませんが、補助対象ツールに認定されるためのITベンダー登録申請を行っています。
また、都道府県によっては、自治体が提供している補助金の利用が可能です。 - 現在利用しているシステムからデータを移行できますか?
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データ移行は可能です。現在ご利用されているシステムとの違いや、システム移行に関するご相談も、お気軽にお問い合わせください。
- 会社外からも匠フォースにログインできますか?
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ログインできます。ネットがつながっている環境であれば、どこでもブラウザから使用可能です。

前田将太(まえだ・しょうた)|匠技研工業株式会社 代表取締役社長
出身地:東京都
出身校:東京大学法学部(同大学院中退)
幼少期より弁護士を志していたが、社会課題を根本から解決する手段としてスタートアップに魅力を感じ、起業の道へ。その過程で、日本の製造現場における深刻な課題と向き合い、その過程で、日本の製造現場における深刻な課題に直面し、モノづくりの課題解決を決意。
現在は、製造業に特化した工場経営DXシステム「匠フォース」の開発・提供を通じて、現場の生産性向上・技術承継・適正取引の実現に取り組んでいる。
「フェアで持続可能な、誇れるモノづくりを。」をミッションに掲げ、サプライヤー企業を中心とした中小製造業の現場改革を支援。現場視点を重視した実践的なDX推進やAI活用を強みとする。